本当の意味での想像力とは
よく、想像力が大事だと言う。
でも想像力って、何だ?
想像力を働かせて、相手の立場になって考えろ、とよく聞く。
でも俺が思うに、経験したことのないことは、想像するのも難しい。
いじめっ子に、いじめられっ子の気持ちは分からない。
平和な国で育った人達に、爆撃の恐怖は想像できない。
だからこそ、どういうものなのか想像することが大事だ、と言うのだろう。
でもきっと、想像力は、ある程度いろいろな経験をしないと磨かれない。
日本に住んでいると、戦時中の恐怖や、飢餓の苦しさなどは想像できないが、地震や洪水などのときに経験した恐怖から、頑張って想像することはできる。
パートナーに先立たれる悲しみは計り知れないが、恋人との別れは経験したことがある。
比べ物にならないと言われてしまったら、それまでだが、自分の経験から他の人が経験した喜怒哀楽を想像する努力が、想像力を鍛えるということなのかもしれない。
「自分がされて嫌なことはするな」とよく言われるが、自分がそれをされるまでは、本当に嫌かどうかは分からない。
人の気持ちなんて分からないし、感じ方だって人それぞれだ。
もしかしたら、自分はされても嫌じゃないことが、他の人にとっては嫌なことなのかもしれない。
インド人は満員の飛行機内で大音量で映画を見るし、中国人は人が降りる前に電車に乗る。
彼らにとっては日常でしかないし、周りに迷惑をかけているつもりもない。
彼らにとっては、迷惑がっている日本人の方が、いちいち鬱陶しいと感じられるのかもしれない。
そんな感覚は、日本で生まれ育った人には、なかなか想像できない。
多様性だのダイバーシティだの言っているが、人種や文化の違いの前に、個人個人の違いを受け入れる感覚を養い、規則通りに動かない人を白い目で見るのをやめる努力から始めるべきなのかもしれない。